ここでは会社が知っておくべき労働条件について、不利益な労働条件への変更が許されるケースをご説明します。
本記事の目次は次のとおりです。
目次
1.労働条件変更
労働契約法では、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」と規定されています(労働契約法8条)。
賃金の引き下げ等、労働条件を変更する方法としては、①使用者・労働者の個別合意による方法、②使用者と労働者との間で労働協約を締結する方法、③就業規則を変更する方法の3つがあります。①~③いずれの方法をとるかについては、会社の規模、労働組合の有無、会社の経営状況等を鑑み、個別具体的に判断をしていくことになります。
2.どのような場合、労働条件の変更が認められるのか
(1)個別合意による方法(労働契約法第8条)
労働者と使用者が合意をすれば、労働契約を変更できます。ただし、合意による変更の場合であっても就業規則に定める労働条件よりも下回ることはできません。また、同意を得るためには、不利益変更の必要性、不利益の具体的な内容・程度等について、労働者に十分な情報提供と説明を行わなければなりません。
(2)労働協約の締結
労働協約とは、労働組合と使用者との間で、労働組合員の労働条件について合意し、それを書面化したものをいいます(労働組合法14条)。
(3)就業規則の変更
常時10名以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、その中で始業・終業時刻、賃金等の労働条件を定めなければいけません(労働基準法89条)。そして、労働契約または労働条件通知書で定められた労働条件のうち、就業規則に達しない部分は無効となり、無効となった部分は就業規則で定める基準が労働条件となります(労働契約法第12条)。
原則として、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、既存の労働条件を不利益に変更することはできません。ただし、使用者が、不利益に変更した就業規則を、変更後に労働者に周知し、かつ、その就業規則の変更が合理的と認められる場合には、当該就業規則の内容が個々の労働条件となり、これに反対する労働者の労働条件も、変更後の内容となります(労働契約法第10条)。
3.就業規則による労働条件の変更について
労働契約法第10条
第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
(1)周知したかどうか
就業規則を変更した後は、従業員全員に周知することが義務付けられています。(労働基準法第106条)。
具体的には、各事業所の見やすい場所に掲示する、書面で従業員全員に交付する、メールや回覧板で従業員全員に回覧する、自社システム内にデータとして保存し、従業員全員にデータへのアクセス方法を周知する等の方法が考えられます。
(2)合理的かどうか
就業規則の変更が合理的かどうかは、「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況」等を考慮して判断されます。すなわち、就業規則の変更の必要性と、従業員が受ける不利益の程度を総合的に判断することになります。
4.不利益変更によるリスクとは
会社が定めた労働条件の変更が許されない不利益変更と判断された場合には、その不利益変更が違法と判断され、損害賠償請求を受けるリスクがあります。
5.千瑞穂法律事務所ができること
会社の経営状況や従業員のパフォーマンス次第では、労働条件を不利益に変更するニーズがあります。他方で、不利益変更をした場合には従業員から損害賠償請求を受けるリスクがあります。
広島の千瑞穂法律事務所では、労働条件を変更したいという要望があった場合には、初動を誤らないように手続の方法についてご案内いたします。また、裁判上違法と判断されることがないような、合理的な労働条件を提案させていただきます。