ここではどのような場合に労働条件の変更ができるか、会社が知っておくべきことをご説明します。
労働条件の変更については、目次「3.労働条件の変更について」以下をご参照ください。
目次
1.労働条件の決定方法
1-1.就業規則に従った労働条件にする場合
正社員、パート・アルバイトなどの採用区分に関係なく、10人以上の労働者を常に雇用している事業場では、就業規則を作成し、常時見ることができるようにしておくことが義務付けられています(労働基準法第89条)。
合理的な内容の就業規則を労働者に周知させていた場合には、就業規則で定める労働条件が労働者の労働条件になります(労働契約法第7条)。
1-2.就業規則とは異なる内容の労働条件となる場合
労働者と会社が就業規則とは違う内容の労働条件を個別に合意していた場合には、その合意していた内容が、労働者の労働条件になります(労働契約法第7条但書)。
したがって、就業規則が存在する場合でも、労働者の特徴や労働の内容・性質に合わせて、労働条件を柔軟に定めることができます。
もっとも、労働者と使用者が個別に合意していた労働条件が、就業規則を下回っている場合には、労働者の労働条件は、就業規則の内容まで引き上がります(労働契約法第12条)。
なお、法令や労働協約に反する就業規則は、労働者の労働条件にはなりません(労働契約法第13条)。
2.労働条件の明示について
会社が労働者を採用するときは、特定の労働条件を明示しなければなりません(労働基準法第15条1項、労働基準法施行規則第5条)。
2-1.必ず明示しなければならないこと
2-2.定めをした場合には明示しなければならないこと
② 賞与などに関すること
③ 食費、作業用品などの負担に関すること
④ 安全衛生に関すること
⑤ 職業訓練に関すること
⑥ 災害補償などに関すること
⑦ 表彰や制裁に関すること
⑧ 休職に関すること
3.労働条件の変更について
労働条件を変更するには
② 会社と労働組合との間で労働協約を締結する方法
③ 会社と労働者間の個別合意による方法
3-1.就業規則の変更による労働条件の変更
会社が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、以下を満たすことが必要です(労働契約法10条)。
・労働者の受ける不利益の程度
・労働条件の変更の必要性
・変更後の就業規則の内容の相当性
・労働組合等との交渉の状況
② 労働者に変更後の就業規則を周知させること
具体的には、以下の諸事情を考慮して不利益か否かを判断します。
① 労働者の受ける不利益の程度
② 労働条件の変更の必要性
③ 変更後の就業規則の内容の相当性
④ 労働組合等との交渉の状況
⑤ その他の就業規則の変更に係る事情
そのような不利益を労働者に法的に受任させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである必要があるとされています(最判昭和63.2.16)。
もっとも、会社が変更後の就業規則を労働者に周知させたことに加え、就業規則の変更が合理的なものであることという要件を満たす場合には、労働者の労働条件は変更後の就業規則に定める労働条件によることとなります。
3-2.個別の合意による労働条件の変更
労働協約における労働条件その他の労働者の待遇に関する基準を定める部分には、個々の労働契約を直接規律する効力が与えられています。
労働協約が締結されれば、当該労働組合の組合員である労働者について労働条件変更の効力が及びます(※)。
※事業場の4分の3以上の同種の労働者が当該労働組合に加入していれば、事業場の他の同種の労働者にも当該労働協約が適用されます。
【例外】
労働組合内の意見集約手続や協約締結権限の授権手続に瑕疵がある場合や、特定又は一部の組合員をことさら不利益に扱う内容など、労働組合の目的を逸脱して締結された場合には、労働条件変更の効力が及びません。
3-3.労働協約の締結による労働条件の変更
労働者と会社の合意により、労働者の労働条件を変更することができます。
すなわち、会社が労働者の意見を聞くことなく労働条件を変えることはできません。
変更の対象となる労働者が多数であると、全員から合意が得られない可能性が高まるため、変更の対象となる労働者が少数であればこの方法を検討することになるでしょう。
合意の内容については、後に合意の存在を巡ってトラブルになることを回避するため、必ず合意書面を作成するべきです。
また、賃金等の重要な労働条件を変更する合意については、単に労働者がこれを受け入れたというだけではなく、労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する(最判平成2.11.26)必要があります。
自由な意思に基づいて合意がされたといえるためにも、会社からは、労働条件変更の必要性だけでなく、労働者に生じる不利益の内容・程度についても丁寧に説明を行った上で、合意書に署名・押印してもらう必要があるでしょう。
なお、労働者と使用者が個別に合意した労働条件が、就業規則を下回っている場合には、労働者の労働条件は、就業規則の内容まで引き上がります(労働契約法第12条)。
3-4.就業規則で労働者に対して減給の懲戒を定める場合
近時の最高裁判例では、懲戒処分を行うには予め就業規則において懲戒の種類及び事由を定めて周知しなければならないとされています。
減給とは、労働者が現実になした労務提供に対応して受けるべき賃金額から一定額を差し引くことをいいます。
この減給については、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期の総額の10分の1を超えてはならないとされています(労働基準法91条)。
この1回の額とは、1回事案についてという意味です。
また、総額が一賃金支払期の総額の10分の1を超えてはならないというのは、複数事案に対する減給をなす場合には、その総額がその賃金支払期における賃金総額の10分の1以内という意味であり、もしこれを超えて減給をする必要が生じた場合は、その部分の減給を次期の賃金支払日に延ばさなければなりません。
4.不利益変更によるリスクとは
会社が定めた労働条件の変更が許されない不利益変更と判断された場合には、その不利益変更が違法と判断され、損害賠償請求を受けるリスクがあります。
5.労働条件の変更について千瑞穂法律事務所ができること
就業規則や雇用契約書については、裁判所でさまざまな判断がされているところ、これら裁判所の判断を前提とした書面を作成する必要があります。
当事務所では、会社の実情及び運営形態を聞き取りし、また裁判所の判断内容を前提として就業規則・雇用契約書の作成をさせていただきます。
併せて、現在運用している就業規則・雇用契約書にリスクがないかのリーガルチェックもさせていただきます。
(2) 問題社員への対応
問題社員に対して、どのように労働条件を変更することができるかについてのご相談を承ります。
(3) 労働審判への対応
労働者とのトラブルが労働審判に発展しそうな場合、労働審判についてのご相談を承ります。
→詳細は労働審判についてのリンクを御覧ください
6.労働条件の変更に関するご対応の弁護士費用
初回ご相談は無料です。その他弁護士費用についてはこちらをご覧ください。
7.ご相談の流れ
千瑞穂法律事務所に企業法務にまつわるご相談や各種お困りごと、顧問契約に関するご相談をいただく場合の方法をご説明します。
【1】 お電話の場合
「082-962-0286」までお電話ください。(受付時間:平日9:00〜17:00)
担当者が弁護士との予定を調整のうえ、ご相談日の予約をおとりします。
【2】 メールの場合
「お問い合わせフォーム」に必要事項をご入力のうえ、送信してください。(受付時間:年中無休)
送信いただいた後に担当者からご連絡し、ご相談日の予約をおとりします。
(ご相談時刻:平日9:30〜19:00)
※ 夜間や土日のご相談をご希望のお客様については、できるかぎり調整しますのでお申し出ください。
見積書をご確認いただき、ご了解いただいた場合には、委任状や委任契約書の取り交わしを行うことになります。
この場合、当該案件について電話やメールによるご相談が可能です。
進捗についても、適時ご報告いたします(訴訟対応の場合、期日経過報告書をお送りするなどのご報告をいたします)。
② 期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること
③ 就業場所、従事する業務に関すること
④ 始業・終業時刻、休憩、休日等に関すること
⑤ 賃金の決定歩法、支払時期などに関すること
⑥ 退職に関すること(解雇の事由を含む)