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就業規則の条項例(雛形)シリーズ 「休職制度」について


人事労務問題において、極めて重要な資料となるのが就業規則であるということはご存じでしょうか。

「協調性がなく同僚や顧客とトラブルばかり起こす社員がいて困っている」、「能力不足の社員を解雇したい」、「メンタルで休み始めた社員にどう対応すべきか悩んでいる」・・・

こうした労働問題に対処するためには、会社と労働者の約束事を定めた就業規則を確認することが必須です。

ある裁判官は「就業規則は舐めるように見る」という言葉を使っており、この表現からも就業規則の重要性がよく分かると思います。

しかし、会社の経営者の方から「ネットで拾った就業規則をそのまま使っている」、「一応作成したがあまり確認していない」といった話はよくお聞きしますし、就業規則について、極めて重要なものであると認識されている会社は少ないように思います。

 

そこで、本シリーズでは、使用者(会社)側として労働問題を多数扱う弁護士が、会社側として理想的と考える就業規則の条項例をお伝えします。具体的な条項例を記載しておりますので、自社の就業規則と照らし合わせてご活用いただければ幸いです。

また、本記事の就業規則の条項例は、裁判に備えた条項になるよう起案しておりますので、会社の方のみならず、就業規則を作成する専門家である社会保険労務士の先生方にもご参考にしていただければ幸いです。

それでは、今回の記事では、休職制度に関する就業規則の条項例をご紹介します。

条項例のみを確認されたい方は、「3.休職制度に関する就業規則の条項例」をご確認ください

1.厚生労働省のモデル就業規則について

就業規則については、厚生労働省がモデルとなる就業規則を公表しており、このモデル就業規則をベースに就業規則を作成している会社も多いと思います。

もっとも、上記モデル就業規則は、使用者(会社)側の弁護士としてみた場合、修正・加筆が必要と思われる箇所が少なくありません。以下、ご説明します。

休職に関して、厚生労働省のモデル就業規則(令和5年7月)では、次の条項例が示されています。

(休職)

第9条 労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

① 業務外の傷病による欠勤がか月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき

年以内

② 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき

必要な期間

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html/”

このようにモデル就業規則では、「労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする」とされており、一定の休職事由が発生した場合には自動的に休職になると定めています。

しかし、自動的に休職になると定めた場合、会社による休職命令などがないまま休職になるところ、いつの時点で休職になったのかなどについて争いが生ずる可能性があります。

 

また、モデル就業規則では休職期間に治癒する可能性がないような場合でも休職になる可能性があり、一定期間休職とし解雇を猶予することで職場復帰を待つという休職制度の趣旨に合致しない状況になるおそれがあるでしょう。

そこで、休職については、自動的に休職とするのではなく、会社が明示的に休職を命じた場合に休職になると定めた方が適切であると考えます。

また、モデル就業規則では、「業務外の傷病による欠勤が○か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき」が休職事由に該当するとされています。

 

しかし、この条項では、例えば、10日欠勤し2日出勤、再び20日欠勤後に1日出勤した事例のように出勤と欠勤を繰り返しているような場合に、休職を命ずることができなくなるという大きなリスクがあります。

そこで、断続的に欠勤している場合も休職事由となるように、「直近〇か月で〇日以上欠勤したとき」などと定めるべきでしょう。

さらに、一応出勤はしているものの、メンタル疾患等のために、遅刻や早退を繰り返しており、業務に支障が生じている場合にも、休職を命ずることができるようにしておく必要もあります。

 

それでは続いて、休職制度を設ける際の一般的な注意点をご説明します。

2.休職制度を設ける際の注意点

(1)そもそも休職制度を設けるべきか

休職制度は、ある従業員について、労務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対し労働契約そのものは維持させながら労務への従事を免除することまたは禁止するものです。

 

このような休職制度についてですが、そもそも法律上設けられた制度ではなく、それぞれの会社が就業規則等において、休職制度を設けるという選択をしない限り、適用されないということに注意が必要です。

 

休職制度は多くの就業規則の雛形に設けられている結果、意図をしない場合でも設けられている会社が多いと思います。

 

しかし、休職制度については、各社ごとに、休職制度を設ける必要性があるか、設けるとして、どのような制度にしておくかを十分に検討する必要があると考えます。

 

(2)会社が指定した医療機関での受診を命ずる条項の重要性

昨今、適応障害やうつ病などメンタルヘルスの不調を原因として欠勤される方が多くなっているところ、メンタルヘルスの不調は、身体の病(病気やケガ)と比較すると、病であるか否かの判断が難しい上、発症の過程、程度などが外部からは分かりにくいという問題があります。

 

また、メンタルヘルスの不調については、主治医が患者の愁訴をそのまま診断書に記載することも少なくないところ、会社側としては、その社員の健康状況をできるだけ客観的に確認し、適宜、適切な判断ができるようにするために、社員に対して会社が指定した医療機関での受診を命ずることができるようにしておくことが重要です。

 

こうした規定を設けていても、受診を拒絶する社員に強制的に受診をさせることができる訳ではありませんが、受診しなかったこと自体を、休職や復職の可否の判断等の際に考慮することができるため、大きな意味があります。

 

(3)休職期間中に遊んでいる?社員への対応

当事務所の扱った事例では、休職期間中の社員が海外旅行に行っていることが発覚したケースや趣味に没頭しマスコミに取り上げられていることが判明したケースなどがあります。

 

精神疾患の場合、海外旅行に行っていることなど自体が直ちに療養義務に違反していると断言できる訳ではないのですが、本来は業務に復帰できるにもかかわらず不当に休職し続けているのではないかという疑いは出てくるため、このような場合にも会社が指定した医療機関での受診を命ずることができるようにしておくべきでしょう。

 

(4)自然退職としておくこと

休職期間満了時の就業規則の条項例としては「休職事由が消滅しなかった場合、解雇する」と定められているものもあります。

しかし、解雇と定めた場合、社員に解雇の意思表示が到達しない場合には、原則として退職させることができないことになってしまいます。

長期間休職している社員は、その所在が不明になってしまうこともあることからすると、大きなリスクといえるでしょう。

 

また、解雇と定めた場合、正面から解雇権濫用法理が問題になってしまうことになります。

そこで、休職期間満了時までに休職事由が消滅しなかった場合、会社側の意思表示をしないでよいように、自然退職になるように定めておくことをお勧めします。

自然退職としたからといって、絶対に争われないということではありませんが、解雇に比較して、会社側に有利といえることは間違いないでしょう。

3.休職制度の関する就業規則の条項例(まとめ)

以上を踏まえ、休職に関する就業規則の条項例は次のとおりです。

(休職)
第●条 会社は、社員が次の各号のいずれかに該当した場合、会社は所定の期間休職を命ずることがある。ただし、試用期間中の社員には適用されない。
① 業務外の傷病により直近6か月で30日以上欠勤したとき
② 業務外の傷病により万全の労務提供が期待できず、治癒(回復)に相当期間の療養を要すると認められるとき
③ 家事の都合、その他やむを得ない事由により30日以上欠勤したとき
④ 公の職務につき、業務に支障があるとき
⑤ 出向を命じたとき
⑥ 前各号のほか、会社が休職をさせることが必要と認めたとき
2.前項1号・2号にかかわらず、休職期間中に治癒する見込みがないと認められる場合、会社は休職を命じない。
3.本条1項1号・2号の場合、会社が休職の要否を判断するために、社員は医師の診断を受け、診断書を提出しなければならない。会社は、提出された診断書を踏まえ、会社の指定する産業医もしくは専門医の意見を聴き、休職の要否を判断する。
4.社員は、会社が前項の検討を行う目的でその主治医、家族等の関係者から必要な事実確認・意見聴取を実施しようとする場合、これに協力しなければならない。

(休職期間)
第●条 休職期間は次のとおりとする。
① 前条1項1号・2号の場合
勤続1年以上3年未満  3か月
勤続3年以上5年未満  6か月
勤続5年以上10年未満 1年
勤続10年以上     1年6か月
ただし、会社が必要と認める場合、会社は上記期間を延長できる。
② 前条1項3号から6号の場合 必要な範囲で会社の認める期間
2.休職期間中は、無給とし、昇給も実施しない。
3.休職期間中は、勤続年数に通算しない。
4.前条1項1号・2号による休職の場合、休職期間中の社員は療養に専念しなければならない。会社は、休職中の社員に対し、会社が指定した医療機関の受診を命じることができ、社員は正当な理由がない限り、これに応じなければならない。
5.前条1項1号・2号による休職の場合、休職中の社員は、原則として1か月に1回、診断書を提出して健康状態に関する報告を行わなければならない。

(復職)
第●条 私傷病による休職期間満了までに休職事由が消滅した場合、社員は速やかに医師の診断書と共に復職願を提出しなければならない。会社が当該医師との面談を求めた場合、社員はこれに協力しなければならない。
2.復職の可否を判断するにあたり、会社は、社員に会社が指定した医療機関の診断書の提出を求めることがある。社員はこれに協力しなければならない。
3.会社は、上記診断結果を前提に、産業医を含めて、復職の可否及び復職を認める場合は業務軽減措置等の要否・内容について決定する。なお、会社は、社員の希望があった場合、復職の可否を判断するために私傷病による休職期間中に試し出勤を認めることがある。この場合の勤務における諸条件(就業開始時間、業務内容、就業場所、賃金の有無等)については、会社と社員とで協議の上、会社が決定する。
4.休職の事由が消滅したと会社が認めたときは、会社は原則として休職前の職務に復帰させる。但し、休職前の職務に復帰させることが困難又は不適当と認める場合には、職務や就業場所を変更することがある。この場合、労働条件の変更を伴うことがある。

(再度の休職)
第●条 私傷病による休職をした社員が、復職後1年以内に、同一若しくは類似の傷病により欠勤した場合、または遅刻や早退を繰り返すなどして業務に支障が生じている場合、会社は再度休職を命ずることがある。
2.その場合における休職期間は前回の休職期間と通算する。

(自然退職)
第●条 休職期間終了日に復職できないときは、自然退職とする。

休職制度に関する就業規則の条項例は以上のとおりです。なお、就業規則の条項は、会社の規模や労働者数、実際の運用をどのように行っているかなどによって臨機応変に変更する必要があるため、より適切な就業規則とするためには、人事労務問題に詳しい社会保険労務士や弁護士にご相談されることが最善策でしょう。

4.千瑞穂法律事務所ができること

千瑞穂法律事務所では、使用者側の人事労務(労働)問題を多数扱っており、問題社員対応や解雇・懲戒、ハラスメント、退職勧奨、メンタル、労働組合、残業代問題、競業トラブルといった会社の課題について、会社側としてサポートしております。詳しくは、下記一覧をご参照ください。

サポート内容
  人事労務
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退職勧奨サポート・退職勧奨プランの作成
・退職勧奨プラン実行管理・指導
・関連書面の作成
・弁護士による従業員との面談
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メンタルヘルス問題対応サポート・メンタルヘルス問題対応プラン策定
・関連書面の作成
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・復職の可否判断
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【2】 メールの場合
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千瑞穂法律事務所にお越しいただき、弁護士がご相談をお受けします。初回ご相談無料
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