電話番号お問い合わせフォームご相談の流れ電話番号お問い合わせフォームご相談の流れ

「どのような場合に退職金を支払わなければならないのか、退職金を支払わないことや減額することができるか」


退職金に関しては、「問題社員を解雇しようと思うが、退職金を支払わないことができるか」、「退職した元社員から退職金の支払いを求められているが支払う必要はあるか」、「競合会社に就職した元社員に退職金の返還を請求できるか」といったご相談を受けることがよくあります。

そこで、本記事では、どのような場合に退職金を支払わなければならないのか、退職金を支払わないことや減額することができるか、支払った退職金の返還請求ができるか等について、ご説明します。

1.どのような場合に退職金を支払わなければならないのか

退職金(退職手当)とは、労働契約の終了に伴い、使用者が労働者に支払う金員のことです。
そもそも退職金制度を設けるか否か(支払うか否か、支払うとしてどのような算定方法にするか等)は、使用者の自由に委ねられています。

そこで、こうした退職金を支払う必要があるか否かについては、基本的には労働契約や就業規則、退職金規程等において退職金を支払うと定めているか否かに左右されます

(1)労働契約や就業規則、退職金規程等において退職金制度を設けていない場合

まず、労働契約や就業規則、退職金規程等において退職金制度を設けていない場合、原則として使用者は労働者に退職金を支払う必要はありません

なぜなら、上記にも記載したとおり、退職金制度を設けることは使用者の義務ではないからです。

ただし、労働契約や就業規則、退職金規程等において退職金制度を設けていない場合であっても、過去、退職者全員に一定の退職金を支払っていたような場合や入社時に退職金制度があると説明したような場合等には、退職金支払いに関する労使慣行や合意が認められ、例外的に退職金支払義務が発生することがあります(大阪高判平成5.6.25、横浜地判平成9.11.14等)

もっとも、こうした退職金支払いに関する労使慣行や合意が認められる場合はあくまで例外ですので、使用者側としては、退職金制度を設けていない場合の退職金の支払いは慎重に検討すべきでしょう。

(2)労働契約や就業規則、退職金規程等において退職金制度を設けている場合

労働契約や就業規則、退職金規程等において退職金制度を設けている場合、使用者は労働者に退職金を支払う必要があります

なぜなら、こうしたルールを設けている以上、退職金の支払いは使用者と労働者との間の決まり事になっているといえるからです。

なお、使用者が退職金制度を設けている場合、労働契約締結時に「退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項」を明示する義務があり(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条1項4号の2)、また常時10人以上の労働者がいる事業場の場合、就業規則にも「退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項」を明記する必要があります(労働基準法89条3号の2)。

そこで、自社が退職金制度を設けているか否かは、労働条件通知書や就業規則等を確認するということになります。

2.退職金を支払わないことや減額することができるか

これまで見てきたように、労働契約や就業規則、退職金規程等において退職金制度を設けている場合など一定の場合には、使用者は労働者に退職金を支払う必要があります。

もっとも、横領などを行い懲戒解雇となったような場合や、退職後に競合会社に就職するような場合まで退職金を全額支払わなければならないのでしょうか。

以下では、懲戒解雇や競業避止・秘密保持義務違反の場合に、退職金を不支給とすることや減額することができないかを検討します。

(1)懲戒解雇の場合の退職金不支給・減額について

多くの企業では、退職金規程等に「懲戒解雇の場合には退職金を減額又は不支給とする」といった規定を設けています(なお、懲戒解雇については、コチラをご参照ください)。

こうした規定がある結果、懲戒解雇の場合には退職金を一切支給していない企業(使用者)も多いのですが、争われた場合、使用者が敗訴する可能性があります。

というのも、退職金は、労働者の長年の功労に報いるという「功労報償的な性格」だけではなく、「賃金の後払い的な性格」も有すると考えられているため、裁判所は「労働者のそれまでの功労をすべて抹消ないし減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為」があった場合に限って、退職金を不支給とすることや減額することが許されると考えているからです。

そこで、個別のケースごとに、労働者のそれまでの功労をすべて抹消ないし減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為があるか否かを検討したうえで、退職金の不支給や減額を決定する必要があります

例えば、多数のカラ出張を行い、200万円以上の出張旅費を不正受給した事案で、裁判所は労働者のそれまでの功労をすべて抹消するものとして退職金の不支給を認めました(神戸地尼崎支判平成20.2.28)。

また、帰宅中の酒気帯び運転による懲戒解雇事案について、34年間他に懲戒処分を受けたことがないなどの事情があった事案では、裁判所は「長年の勤続の功労を全く失わせる程度の著しい背信的な事由が存在するとまではいえない」として、本来の退職金の約3分の1の支給を命じました(東京地判平成19.8.27)。

その他、退職した日に売上伝票の写しを自宅に持ち帰ったケースについて、18年以上在籍した優秀な営業マンであったこと、会社に損害が生じた証拠はないことなどから、裁判所は全額の退職金の支払いを命じました(大阪地判平成16.8.6)。

なお、退職金不支給・減額については、就業規則等への記載内容を十分に精査しておくことが重要です

例えば「懲戒解雇の場合には退職金を減額又は不支給とする」と定めていた場合、実際に懲戒処分が実施されない限り、懲戒解雇事由が存在したとしても退職金を不支給とすることには大きなリスクがあります。

そこで、定め方としては「懲戒解雇事由に相当する行為が判明した場合、退職金を一部又は全部支給しない。」としておいた方が適切でしょう。

(2)競業避止・秘密保持義務違反の場合の退職金不支給・減額について

ア 在職中の競業避止・秘密保持義務違反等に伴う退職金不支給・減額

労働者が在職中に競業避止義務や秘密保持義務に違反した場合や従業員の引き抜きを画策した場合、懲戒処分などの厳しい措置に加え、退職金が不支給・減額されることがあります。

このような退職金の不支給・減額の適否については、懲戒解雇の場合と同じく、「労働者のそれまでの功労をすべて抹消ないし減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為」と評価できるか否かによって判断されることになります

そこで、上記「懲戒解雇の場合の退職金不支給・減額について」をご参照ください。なお、競業避止義務についてはコチラ、従業員引き抜きについてはコチラもご参照ください。

イ 退職後の競業避止違反に伴う退職金不支給・減額

企業によっては、就業規則や退職金規程等において、退職後一定期間同業他社に就職することを禁じていることも少なくありません。

もっとも、退職後の競業避止違反に伴う退職金不支給・減額については、労働者に職業選択の自由が認められることの関係で、裁判所は、在職中の競業避止違反に比べてより厳格な判断を行います。

例えば、退職後6か月以内に同業他社に就職した場合に退職金を支給しないという就業規則に該当するとして退職金を不支給とした事案で、裁判所は、本件退職金が「賃金の後払い的な性格」を有すること、減額ではなく全部不支給であり退職従業員の職業選択の自由に大きな制限を行うものであることなどから、退職金不支給条項の適用は「会社に対する顕著な背信性がある場合に限られる」といった解釈を行いました。

このように、裁判所は、退職後の競業制限の必要性やその範囲(期間・地域)、退職の経緯などの事情を総合考慮したうえで、退職金の不支給・減額規定自体の有効性や適用の合理性を判断しているため、退職後の競業避止違反に伴う退職金不支給・減額を検討する際には特に注意が必要でしょう。

3.支払った退職金の返還請求ができるか

就業規則や退職金規程に「退職後、在職中の懲戒解雇事由に相当する行為が判明した場合、退職金を一部又は全部支給しない。また、既に退職金を支給していた場合、その返還を求めることができる」といった定めを設けていた場合、事後的に退職金の返還請求を行うことは可能です。

他方、このような定めが存在しない場合の返還請求は、必ず請求ができるという訳ではありません。そこで、就業規則や退職金規程の条項は極めて重要であり、社会保険労務士の先生にお願いするなどして作りこんでおくべきと考えます。

4.退職金に関する問題について、千瑞穂法律事務所ができること

当法律事務所では、大企業から中小企業まで、問題社員の解雇や退職トラブルを多数取り扱ってきました。このような退職時のサポートを行う場合、退職金の支払いの要否は常に問題となります。

そこで、当事務所では、これまでの多数の経験を踏まえ、個別具体的な御社の事例ごとに、退職金を支払う必要があるのか、支払うとして全額支払う必要があるのか、支払った退職金の返還を求めることができるのかなどについて、具体的なアドバイスを行うとともに、状況次第では会社の代理人として行動しています

また、トラブル解決後は、同様のトラブルの再発を防止するため、就業規則や退職金規程の改訂に関するアドバイス等も行っています。

退職金問題は金額的にも高額になることが多いため、「退職金の支払いを求められた」、「退職金を支払ったが返還してもらいたい」といった場合には、広島の千瑞穂法律事務所にお気軽にご相談いただければと思います。