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カスハラから従業員を守り、企業の成長につなげる!~弁護士が法改正を踏まえ社内ルール構築、トラブル時の対応を行います~

弁護士 桝井 楓

近年報道等でカスタマーハラスメント(カスハラ)が大きな話題になっており、2025年6月に労働施策総合推進法の改正が成立し、企業等にカスハラ防止措置が義務付けられることになりました。

以下、カスハラの定義、法改正による企業の義務、カスハラによる不利益等について解説させていただきます。

1 カスハラとは?

 改正労働政策推進法では、カスハラの定義は

①職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、

②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより

③当該労働者の就業環境を害すること

とされています(改正労働施策推進法33条1項)。

上記の定義のうち、社会通念上許容される範囲を超えるか否かが大きなメルクマールになると考えられます。

そして、社会通念上許容される範囲を超えるか否か判断するにあたっては、

 

・顧客等からの要求内容に正当な理由があるか否か

・正当な理由があるとして、要求を実現するための手段が相当な範囲か否か

 

が一つの指標となるのではないかと考えられます(厚生労働省 カスタマーハラスメント対策企業マニュアル参照https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf)。

 

例えば、企業側の商品に問題がないのに、問題があるとして交換等を求めることは要求内容に正当な理由はなくカスハラに該当すると思われます。また、仮に企業側の商品に問題があり、顧客が交換等を求める場合であっても、企業の従業員に暴言を言ったり、何度も何度も電話をかけてくる等の手段を採る場合は、要求を実現するための手段が不相当でありカスハラに該当すると思われます。

 

2 法改正による企業の義務

改正労働施策推進法では、カスハラ対策に関し「当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と義務付けられています。

事業者側が講ずべき措置等に関しては、今後指針が定められることになっています(改正労働施策推進法33条4項)。

 

なお、現状(令和7年11月現在)ではパワハラ等に関する防止措置と近いものになるのではないかと考えられています。仮に近いものとなった場合、企業側が講ずべき措置等は、以下のようなものとなると考えられます。

 ①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

→ルールを定め、周知・啓発するための研修等を実施する

②相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

→相談窓口の設置・周知等

③職場におけるカスタマーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

→事実関係の調査、被害者への配慮の措置、再発防止等

④①~③までの措置と併せて講ずべき措置

→プライバシーの保護、相談等を理由とした不利益な取扱いの禁止・周知啓発

これから定められる指針の内容によりますが、上記①~④に近い内容となった場合は、就業規則の変更等の対応が必要になると考えられますので、注意が必要です。

 

3 カスハラは企業に大きな不利益をもたらしうる

カスハラにより、企業に以下のような不利益が生じる可能性があります。

 ⑴ 従業員の離職

カスハラ対応による精神的疲弊等により、優秀な社員が退職してしまうことも多々あります。

 

 ⑵ 従業員から損害賠償請求がなされるリスク

例えば、カスハラによって従業員にメンタルヘルス不調が発生した場合、企業のカスハラ対策が不十分であるとして(安全配慮義務違反があるとして)、損害賠償請求がなされる可能性もあります。

損害賠償請求がなされる場合、従業員の病状や通院期間によっては、請求金額が数百万円以上となり得ます。

法改正により企業側に雇用管理上必要な措置が義務付けられることも踏まえると、企業側で対策を行わなかった場合には安全配慮義務違反が認定されやすくなるのではないかと考えられます。

 

 ⑶ 生産性低下

従業員がカスハラ対応に忙殺され、本来行うべき業務が滞り、生産性・モチベーションの低下につながります。

 

 ⑷ 顧客離れ

例えば飲食店やスーパー等の店舗の場合、とある顧客によるカスハラが発生した際に、他の顧客も居合わせていることも多いと考えられます。このような場合に企業側がカスハラに対して適切な対応ができていない場合は、他の顧客に不快感を与え、信頼を失った結果、顧客離れにつながるリスクがあります。

 

4 3のような状況を回避するために弁護士ができること

カスハラは顧客によって引き起こされるものであるため、発生をできるだけ防止することはできても、カスハラを0件にすることは困難と考えられます。他方で、カスハラにより上記3のとおり従業員や顧客に影響を及ぼすことから、企業が適切な対応を行うことが重要となります。以下、カスハラ対策にあたって弁護士がお役に立てることを述べさせていただきます。

 

 ⑴ 弁護士がカスハラ指針を作成

当事務所がカスハラ指針を作成し、それをHPに掲載した顧問先様で顧客からの過剰な要求(カスハラ)の数が減少したケースもあります。

 

 ⑵ 弁護士が、カスハラに関する企業内の対応方法や手順を作成し、従業員の方に周知

カスハラは瞬時の対応を求められることが多く、緊急時は気が動転して事実確認等の適切な対応を行うことが難しくなる可能性もあることから、顧客とのトラブル発生時等に、誰がどのような手順で行動するかのルールを明確にしておく必要があると考えられます。

弁護士が改正労働施策推進法等を踏まえ、このようなルールを作成させていただくこと、従業員の方に実際にカスハラ事案が発生した場合の対応に関する研修を実施することも可能です。

このような対応がなされているだけでも、従業員の精神的負担は大幅に減少すると考えられ、離職や従業員とのトラブルのリスクを減少することにつながると考えられます。

 

 ⑶ 顧客の言動が正当なクレームか否かの判断

カスハラに関する申告があった際に、まずは事実関係の調査を行う必要があると考えられるところ、調査が足りているか否か、足りているとして過剰な要求か否か、手段としてやりすぎか等企業側でカスハラ該当性の判断に悩まれるケースも多々あると思います。

このような場合に、弁護士が、速やかに追加で必要な調査、カスハラ該当性や方向性(例えば警察に相談する、弁護士が窓口になる等)についてコメントさせていただきます。

 

 ⑷ 顧客との窓口を弁護士にする

顧客からのクレームが収まらない等対応に困られた場合に、弁護士から顧客に書面を送付する等して、今後は企業に直接連絡をせず、弁護士事務所に連絡するよう伝えることもできます。

弁護士から書面が届くだけでも顧客の過剰な要求や連絡が止むケースも多いです。

 

 ⑸ 仮に従業員とトラブルになった際に弁護士が対応等を行う

従業員から損害賠償請求がなされる等のトラブルとなった際、弁護士が対応を行います。従業員の様子がおかしいと思われた場合に、予めご相談いただいているとトラブルを回避することや裁判等になった場合に備えた対応を行うこともできます。

 

5 最後に

当事務所は、広島県では数少ない使用者側に注力した業務を行っており、従業員の方とのトラブル対応や顧客とのトラブル対応を数多く行ってまいりました。当事務所のこれまでの経験を活かし、カスハラから従業員の方、ひいては企業を守り、成長につなげるお手伝いができればと考えております。

 

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