社内に協調性のない社員や能力不足の社員、ハラスメント社員などがいる場合(いわゆる問題社員がいる場合)、まずは面談を行い、事実確認や注意・指導を行うことになります。
こうした社員を放置していた場合、職場内の人間関係が壊れたり、働きやすい職場環境が維持できなくなったり、会社の成長が妨げられてしまったりするからです。
もっとも、面談の際の言動は後に問題となることがあるため、事実確認や注意・指導にあたっては十分に注意が必要です。
そこで、本記事では、問題社員と面談をする場合の注意点やNG対応について、ご説明します。
目次
1.問題社員と面談をする場合のNG対応・注意点について
(1)長時間話をしない
面談をする際の一つ目の注意点は、長時間話をしないことです。
例えばですが、問題社員が業務上のミスをしたような場合でも、1時間以上にわたって叱責するということは適切ではありません。
こうした叱責は、パワーハラスメントであると判断されるリスクもありますので、注意・指導は行うにしても10分~30分程度が望ましいでしょう。
もっとも、ポイントとなる考え方は「必要かつ相当な対応といえるか」であり、時間が長いこと自体が常に違法になる訳ではありません。
例えば、事実確認に時間がかかった場合や社員の言い分を聞くことに時間がかかった場合などは、全体での面談時間が1時間を超えるような場合でも直ちに違法ということにはならないでしょう。
面談の内容に応じて、必要性・相当性があるかを常に意識していただくことが大切です。
(2)大人数で面談しない
面談を行う場合、大人数で行わないことも重要です。
問題社員を追及しようとするあまり、上司等が約10名程度で1名の社員と面談したケースのご相談を受けたことがありますが、このケースでは人数バランス自体が威圧的であるとして問題視されました。
問題社員と面談する場合でも、会社側としては2、3名程度で行うことが適切であると思います。
もっとも、面談を行う側が1名、社員も1名という1対1も適切ではありません。
というのも、1対1での面談を行った場合、後日、面談時の言動が適切ではなかった(暴言や暴行を受けた)などと主張されるおそれがあるほか、問題社員側が暴力的な行動に出た場合に抑止できないことがあるからです。
対応する人数等の観点でも、「必要かつ相当な対応といえるか」は重要であり、暴力的な行動を多数行っている問題社員には屈強な男性を含め3、4名程度で対応することが考えられますし、問題社員が女性の場合には同性の社員に対応させることが考えられます。
(3)決めつけない
問題社員と面談をする際、「早急に注意・指導を行わなくては」という思いが先行し、本人の言い分を充分に聞かないまま注意・指導をされているケースをお見かけすることがあります。
しかし、どのような場合でも本人の言い分を聞くことは極めて重要です。
問題社員を懲戒する場合、基本的には本人に弁明の機会を付与する必要があるということからも、ひとまずは本人の話を聞く必要があります。
そこで、まずは何があったかについて決めつけず、淡々と事実確認などを行うことからスタートするべきでしょう。
本人が不合理な弁明をしているような場合でも、そのまま言い分を確認していくことが大切です。不合理な弁明は、そのこと自体が本人にとって不利な事実になります。
本人から一通り言い分をお聞きした後は、他の社員から聞いた話や証拠との整合性などを確認していくことになります。
こうした過程を経てどのような出来事があったのかを把握した後に初めて、問題社員に対して注意・指導を行うという流れが適切な対応方法といえます。
(4)大声で話さない・感情的にならない
問題社員と面談する際、大声で話さない・感情的にならないということも大切です。
この点は当然と思われる方も多いかもしれませんが、横領などを行ったと思われる社員が不合理な弁明を続けている場合や他の社員との協調性が問題となっている社員が「ああ言えばこう言う」といった態度を繰り返す場合など、面談対応をしている側が感情的になってしまいかねない場面というのは意外とよくあります。
ただ、こうした場合であっても、あくまで平静を装い、出来るかぎり淡々と面談を行っていただくことが望ましいです。
また、感情的にならないという点と関連しますが、何を目的に面談を行っているのかについては常に意識していただいた方が良いでしょう。
例えばですが、事実確認の段階として本人の言い分を聞いているのか、事実確認は終わった後で注意・指導を行っているのか、注意・指導のレベルは超えてしまい退職の勧奨を行っているのかなど、今何を目的に面談しているのかを明確にしておくことは、その必要性・相当性の判断を行うためにも重要です。
なお、退職勧奨を行う場合の具体的な注意点については、こちらをご参照ください。
(5)録音はとる
当事務所でご相談を受ける労働事件でも、昨今は社員側から録音資料が提出されるというケースが非常に多くなっています。
つまり、社内での面談時の会話などが秘密裏に録音され、その録音資料が訴訟に提出されるということがよくあるのです。
ところが、こうした面談について、会社側が録音資料を有していることは多くはありません。
これは大きな会社であれば社内で面談記録などが書面で残されることや録音等の準備を備えていないことなどによるものと思われますが、相手方に録音資料があるにもかかわらず当方にないという状況は致命的になることがあり得ます。
そこで、企業規模に関わらず、また面談記録を書面として残すか否かに関わらず、録音はしておいた方がよいでしょう。
録音を行う場合、社員の側に録音をする旨は告げておいた方が適切です。告げておかないと証拠として絶対に使えないという訳ではありませんが、告げることのデメリットが特に大きくない限り、告知しておいた方が適切と考えます。
なお、録音を行った場合でも、どのような場所に、誰が参加していたかは分かりません。そこで、別途、面談記録を用意し、いつ、どこで、誰が参加した面談か、その際の会話内容の概要はどのようなものだったか等について書面に残しておくことがより良い対応といえるでしょう。
(6)他の社員の面前で叱らない
面談時の注意点の最後は、他の社員の面前で叱らないということです。
ある社員に問題行動があった場合、同僚みんなに立ち会わせて一方的に問い詰めることや朝礼などで名前を挙げて具体的に指摘するといった対応は比較的よくお聞きします。
しかし、こうした対応は違法となることがあります。
このときにも、意識していただくべきは「必要かつ相当な対応といえるか」です。
すなわち、みんなの前で晒し者にするような対応は必要性や相当性を欠くと判断されることが多いため、基本的には避けるべきでしょう。
同様の趣旨で、多数の同僚をCcに付けた状態で、メールで問題社員を叱責することも適切ではありません。実際に裁判例でも違法と判断された事案があります。
では、どのように対応するべきかというと、別室に呼ぶなどしたうえで、プライバシーを確保できる状態にして面談を行うことになります。
当事務所でご相談を受けた事例でも、多数の問題行動を取っていた問題社員を見かねて、その支店全員の参加する会議の場で、数時間かけて、その社員の問題行動を逐一取り上げていったケースがありました。
このケースでは問題社員の問題行動は懲戒の対象になりましたが、一方で他の社員の前で注意・指導を行ったことについても懲戒の対象となりました。
このように面談の方法自体が不適切と判断されてしまうことがあることにはご留意いただければと思います。
2.千瑞穂法律事務所ができること
千瑞穂法律事務所では、当事務所で対応した過去の事例を踏まえ、問題社員の対応について全面的なサポートを行っております。
具体的には、問題社員がおられる場合の対応方法についてアドバイスを行ったり、調査を行うほか、問題社員の方と直接交渉を行うといった対応をしております。
また、社内で事情聴取等の調査を終えられているようなケースでは、調査資料を共有いただいた上で、今後の対応策について書面でコメントを行うということも行っております。
そのほか、事後的に紛争を防止できるような合意書の作成等も行っておりますので、問題社員の対応にお悩みの企業様は、お気軽にご相談ください。
3.弁護士費用
初回ご相談は無料です。その他弁護士費用についてはこちらをご覧ください。
4.ご相談の流れ
千瑞穂法律事務所に企業法務にまつわるご相談や各種お困りごと、顧問契約に関するご相談をいただく場合の方法をご説明します。
※ 夜間や土日のご相談をご希望のお客様については、できるかぎり調整しますのでお申し出ください。
見積書をご確認いただき、ご了解いただいた場合には、委任状や委任契約書の取り交わしを行うことになります。
この場合、当該案件について電話やメールによるご相談が可能です。
進捗についても、適時ご報告いたします(訴訟対応の場合、期日経過報告書をお送りするなどのご報告をいたします)。
【1】 お電話の場合 「082-962-0286」までお電話ください。(受付時間:平日9:00〜17:00) 担当者が弁護士との予定を調整のうえ、ご相談日の予約をおとりします。
【2】 メールの場合 「お問い合わせフォーム」に必要事項をご入力のうえ、送信してください。(受付時間:年中無休) 送信いただいた後に担当者からご連絡し、ご相談日の予約をおとりします。