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内定取消しはどのような場合に認められるか


ここでは内定取消しがどのような場合に認められるのか、採用内定を取り消したい会社が知っておくべきことについてご説明します。

本記事の目次は次のとおりです。

1.採用手続の流れ

新規卒業見込者の採用手続は、次のような手順で進むことが一般的です。

①企業による新卒採用の募集(就職説明会の開催等)
②学生による応募(エントリー)
③採用試験(履歴書や適性試験、面接による審査)
④内々定・内定(内定式の実施等)
⑤採用

中途採用の場合、新規卒業見込者のような一般化は難しいですが、労働者による応募(エントリー)、採用試験、内定、採用といった流れが通常でしょう。

2.労働契約はいつ成立するか

上記1.採用手続の流れに従って採用が行われる場合、企業による募集が申込みの誘引、これに対する労働者による応募が契約の申込み、内定が企業による承諾と考えられています。
そこで、裁判所は、採用内定の段階で、始期付き・解約権留保付きの労働契約が成立すると考えています(最判昭54.7.20,最判昭55.5.30)。

ここで「始期付き」とは、内定時に就労が開始する訳ではなく、入社日に就労が開始するという意味です。

また、一般的に、内定通知書や入社誓約書等において一定の取消事由(例えば、大学を卒業できなかった場合など)が定められ、これらの事由が発生した場合には使用者側が解約権を行使できるようにされています。これが「解約権留保付き」という意味です。

3.内定取消しはどのような場合にできるのか

(1)判例の基準

このように採用内定の段階で、始期付き・解約権留保付きの労働契約が成立しているため、内定取消しは労働契約の解消(解雇)ということになります。

このように内定取消しも解雇であるため、解約権があるからといって理由もなく内定取消しを行うことは出来ません(労働契約法第16条参照)。

この点、内定取消しができる事由は、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であつて、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的に認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」とされています(最判昭54.7.20)。

判例の基準としては上記のとおりですが、以下では、具体的にどのような場合に内定取消しができるのかご説明します。

(2)内定者側の事情による内定取消し

ア 経歴詐称

経歴詐称とは、採用時に学歴や職歴、犯罪歴等の経歴を偽ることです。
前提なのですが、経歴の詐称があったといえるためには、面接担当者の質問に応募者が虚偽の事実を回答した場合や履歴書等に虚偽の事実を記載したことが必要であり、質問などがなされなかったために自発的に申告しなかった場合は含まれません(長崎地判平成12年9月12日等)。

そこで、経歴を重視して採用する場合、応募書類にどのような経歴の記載を求めるか、面接時に経歴に関してどのような質問をするかなどについて事前にしっかり検討しておく必要があります。
また、こうした応募書類や面接時の対話模様は、適切に保管しておくべきでしょう。

経歴詐称がなされた場合でも必ず内定取消しが許される訳ではありません。その経歴詐称が労働能力の評価を誤らせるような重大なものであった場合に限って、内定取消しが認められるということに注意が必要です。
最終学歴を偽った場合や過去の重要な職歴を偽った場合には、基本的に内定取消しは認められますが、何らかの経歴を詐称したからと言って常に内定取消しができる訳ではありません。

 イ その他

内定後に行われた健康診断で業務に耐えられないほどの疾患等が発覚した場合や新規卒業見込者が学校を卒業できなかった場合などは、多くの場合で内定取消しが認められるでしょう。

これに対し、採用選考過程で明らかであった事項や調査できたにもかかわらず行っていなかった事由による内定取消しは認められません。採用選考過程での調査は、必要かつ十分な調査ができているか十分確認しておくべきでしょう。

(3)使用者側の事情による内定取消し

経営状況の悪化を理由に内定取消しを行う場合、いわゆる整理解雇の際と同様の検討を行う必要があります。

整理解雇については、「こちら」をご参照ください。

4.入社後に経歴詐称等が発覚した場合

経歴詐称等が入社後に初めて発覚した場合、もはや内定取消しはできないため、解雇を検討することになります。

発覚した時期にもよりますが、試用期間中に発覚したのであれば、本採用拒否という形での解雇を、試用期間経過後であれば普通解雇か懲戒解雇を選択することになる可能性が高いでしょう。

懲戒解雇を実施する際には、「こちら」をご参照ください。

なお、一般的に懲戒解雇はかなりのハードルがあるため、懲戒解雇できそうなケースでも普通解雇を選択することがあります。

5.千瑞穂法律事務所ができること

広島の千瑞穂法律事務所は、使用者側に立って数多くの労働問題を取り扱っている法律事務所です。

内定取消しの問題についても、個別具体的にケースに応じて内定取消しが許されるか否か、違法となった場合のリスクはどのようなものがあるか、ご相談いただいた時点での最善策は何かなどについて、リーガルコメントを行っております。

内定取消しについて悩まれている広島の企業様は、お気軽に千瑞穂法律事務所にご相談ください。